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Writer's pictureまやはるこ

月下美人の姉さんたち

一緒に暮らしているとなんとなくわかってくるから不思議なものだ。

ベランダにいる月花美人だ。植物という種族。人間という種族。異なるけれど地球にお世話になっている仲間ということなのか。


今年は7月に、12個、小さな花芽がついた。

小さすぎて葉っぱの赤ちゃんなのか、花芽なのか。区別がつかない。

しばらくすると、カタチでわかる。小さな花芽は一センチほど。赤色だ。

イチ、二イ、サン・・十三


毎朝、そおーっと覗き数を数えるのが日課となった。

二センチくらいになった。

イチ、二イ、サン・・ハチ、あれ?

何度数えても九つしかない。足元をみると4つ、ベランダに花芽が落ちていた。

自然落花だ!

他の花を生かすために、自ら落花すると教えてもらったことを思い出した。


ある朝、蕾は膨らんだまま、だらーんとぶら下がっている。元気がない。

海風のせいかもしれないと、部屋の中に入れた。

翌日になると、腕っ節のような茎が蕾を持ち上げていた。

「ついておいでやー」ってイケイケの姉さんに見えてきた。


日に日に花芽が膨らみ蕾となり今や開花しそうになった。

おそらく今夜だろう。

夜になり21時頃から開花を始めた。威風堂々とした姿だ。

暗がりの中でもその白さは、吸い込まれそうに透明だ。

月花美人の姉さんたちは、自分の生命を全うしているのだろうか。

ほどほどにして寝よう。


夜中2時過ぎにふと目が覚めた。甘い香りに誘われ寝室からリビングにいくと、

月花美人の姉さんたちは揃って開花していた。強烈なエネルギー。存在感が半端ない。


朝になると、開花していた花は閉じ、綺麗な透明感はそのままに、だらーんとぶらさがっていた。

「お疲れさま。綺麗な姿を魅せてくれてありがとう」と声をかけた。


その日の昼、月花美人の花さっと湯がき、ポン酢と胡麻をふりかけ青い陶器の器に盛り付けた。

「戴きます」と手を合わせた。見た目の姿とは違い、淡白でオクラのような食感。大自然の包み込むような優しさを感じた。


夜は、花びらを湯船に浮かべた。湯船の中でも透き通る美しさだ。触るとぬるぬる美容に良いと思えて、肌にすりすり。身体がツルツル肌になった。


『どうや綺麗になったやろ』くすくす笑いながら姉さんたちが放つ声が聞こえた気がした。

何故か笑えてきた。


8月の満月前日に三つ。9月の中旬、蕾がついている。開花はおそらく新月頃かな。

また会えるね。

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